dazai

太宰のゆるゆる生活日記

VSチャラい人種

 

 

おおよその運動部出身者は「練習試合」というものを経験したことがあると思う。かく言う私も学生時代の約7年もの間「ソフトボール部」に所属し、これまで数多の練習試合をこなして来た。場合によっては相手校の選手と仲良くなったりする人もいるそうだが、あいにく私は極度の人見知りであったため、相手校の選手とそういった関係を築きたいだなんて一度も思ったことは無い。

 

今回は、高校一年の春。私が入部したての新米部員だった頃の話を振り返ってみたいと思う。

 

学年でソフトボール部に入部したのは私一人だったこともあり、私は部内でひとり行動においての頭角をメキメキと現しつつあった。(まあまあ学校でもひとり行動が目立っていたが、話すと長くなるし悲しくなるので割愛する。)

 

初めは唯一の新入部員である私を不憫に思った3年生の先輩が寄ってきてくれ、輪の中に入れて可愛がってくれていたのだが、私が3年生に囲まれていたりすると、2年生の先輩達が裏でやや私に対して攻撃的になっている気がして、ある時期を境に、私の独断と偏見で、身の保身のため3年生と距離を適度に置くことにしていた。

 

5月頃だったと記憶する。練習試合ということで、他校が我がグラウンドに乗り込んできた。そこそこ強かったと記憶するが、見た目もまあまあ強かった。要するにチャラかったのだ。

 

私はチャラい人種が大の苦手だ。自分がそういった人種と到底かけ離れた人間だということも勿論あるが、一番の理由は私のことを小中とイジメてきたのがまさにチャラい部類の人間だったからである。もうこれはトラウマだ。カースト制度上位に君臨するチャラい人種には二度と関わりたくないとの思いで、私はチャラい人種(馬鹿)がいないであろう進学校に入学したというのに、何故こんな天気の良い休日に出くわしてしまったのかと、絶望の淵に立たされた思いであった。

 

絶対に目を合わせてはいけない。絶対に、ヤツらの視界に入ってはいけない......!!

 

そんな面持ちの中、先輩達VSチャラい人種の練習試合を数時間に渡って見守った。新入部員だったため、補欠であった私は自分の島(ベンチ)から離れずに済む、安全圏に留まることを正式に許されていたのだ。

 

試合が終わり、午後の再戦に備えてお昼休憩を取ることになった。チャラい人種との交流タイムもあと残すところ半分。接触なんて絶対にないであろうから、これはもしかしたら乗り切れるんじゃないかと希望の光が指してきたその時、相手校のチャラい人種数名が私を捕らえた。

 

「すみませ〜ん!トイレどこですかァ?」

 

お手洗いの場所を聞かれた。まさか話しかけられるなんて思ってなかったので、瞬間私はチビるかと思った。

 

自分から行かなくとも、相手が寄ってくる。そりゃあ、そんなパターンもあるわ。

 

ビックリして尿意の増した私は、何を考えていたのか「あ、じゃあ一緒に行きましょうか」と、咄嗟に連れションのお誘いをしてしまった。

 

頭の中では己に対して「バカヤロー!!!!!」の、自責の嵐である。「トイレでシメられる!!!」ととんでもない未来予想図を描いている太宰もいた。

 

「おなっしゃーーす!!!」

 

チャラい人種がゾロゾロと私の後ろをついてくる。傍から見たらこれは『虎の威を借る狐』状態になっていないだろうかと半ば心配になったが、よくよく考えてみれば別にえばり散らしたい相手が休日の校内にいた訳では無かったため、私は自身が『捕虜』の立ち位置に落ち着くことが無難であろうと結論づけることとした。

 

捕虜こと私は、連行されている道中、チャラい人種をグラウンドから最も近いトイレを案内し終えた後、別のトイレに逃げる作戦を企てていた。

 

「着きました、ここです」そう言い残して、私はそそくさと逃げる作戦だった。だったのだが、ここでチャラい人種のうちの3人程が、目的地に着くなり私を囲んだ。

 

しっ、シメられる〜!!!

 

心臓がキュッとなった。死を覚悟したのも束の間、チャラい人種校の中でもキャプテンの肩書きを背負った、最もヒエラルキーの高そうなギャルが口を開いた。「あの、めっちゃ可愛いよね!!」

 

?????????????

 

「え、あ、あの、誰が、ですか?」「あなた!そっちのチームで一番可愛いなってみんなで話してたの!名前教えて!私は〇〇!」

 

これはまさかの展開だ。散々「ブス」「キモイ」「ガリ勉」と私の事を蔑んでいた人種に「可愛い」と言われた。

 

「あの、からかってます?」念のために確認してみた。

 

「ほんとほんと!ずっと話したいと思ってたの。ねえ、ウチらタメなら敬語いいよ」「えっ、あっ、あの、わあ、まだ一年生です...」

 

チャラい人種が全員驚きのリアクションをみせた。それを見て、私も驚く。

 

「そんなに老けて見えますか...」「いや!違くて、そっちのチームの中で一番チャラそうだったから、てっきり3年生なのかなって思って!ってか、訛りかわいい〜!!!『わあ』って自分のこと?かわいい!!!もっと話して!!」

 

わ、私が、チャラい...だと..........?

 

そんなこと言われる日が来るだなんて思ってもみなかった。今日はいつものごとくスッピンだし、ユニフォームもあまり気崩さずに身につけていたつもりだ。一体何を持ってしてこの人達は私に「チャラい」のレッテルを貼り付けたのか...。

 

ここで私はあるひとつの方程式を発見した。私が可愛いかどうかは別として、可愛い人は「ブス」「キモイ」と言ってイジメられる対象にはなり得なかった。つまり、A=BかつB=CならばA=Cの法則に則ると、可愛い人=イジメられないかつイジメられない=チャラい人種ならば可愛い人=チャラい人種、になるという理論は別しておかしくない。

 

チャラいと言われるのには若干抵抗感があったが、人から「可愛い」と言われ慣れていない私はまんまと彼女達に堕ちた。

 

その後私は「訛ってみて!」の無茶振りにそこそこ答えながらも、彼女らのちょっとヤバそうな彼氏の話や、昨今のファッションについての説話を、お昼休憩中永遠と聞かされた。これまで体験したことのない異質極まりない空間ではあったが、気がつけばそれなりに楽しんでいる自分がいた。

 

午後からの試合では、私も一瞬守備で登場させてもらえる機会があった。昼食タイムに体力を削がれていた私に緊張する力も残っていなかったため、気だるげに守備についていたのだが、チャラい人種校の選手が私に対して熱い声援を送ってくるという小っ恥ずかしい事態となってしまった。どうやら相当好かれたらしい。ここまできたら馬鹿にされてるんじゃないかと思える人達もいるかもしれないが、本当に、まじで一生懸命応援してくれていた。

 

あの時の恥ずかしさが上回り、私の中には勝敗の記憶なんて1ミリも残っていなかった。ただ、チャラい人種校の3年生達が、帰りのバスの中からひたすら私に向けてブンブンと手を振っていたことだけは鮮明に覚えている。私が振り返すと「きゃ〜!!!」と黄色い歓声が挙がったため、自チームの先輩達からアイドルかとツッこまれた。

 

チャラい人種に対する偏見は、大学生になった今も変わりはない。少しあるとするならば、「チャラい人種」ではなく「パリピ」と呼ぶようになったことと、そんな人種の中にも、話せば分かり合えて、仲良くなれる人達がいるかもしれないと思えるようになったことくらいである。