dazai

太宰のゆるゆる生活日記

ルールに順が正義

 

 駅のホームで電車を待っていた。車両のドアの目印が足元にある。私はその線を目印に、一番乗りで並んでた。

 

 5分くらい経った。そこに女がやってきた。女は線を無視して、しかし私の右隣にピタリとついて並んでいた。この女は何のつもりだろう。 不可思議な気持ちで満ち満ちながらもスマートフォンを弄って、電車を待つ。

 

 しばらく経つと、右後方に別の女の姿を捉えた。振り返って確認すると、確かに新規の女がいた。右隣の不可思議な女の後ろに、何食わぬ顔で並んでいる。

 

 何故だ。目印の線は私の前に引かれているのだぞ。こいつらには見えぬのか。

 

 私は気持ち半歩後方に下がった。ほら、線を見ろ。ここにあるぞ。ほれ、見ろ見ろ。線はここだ。

 

 その後も来る人来る人、私の後ろではなく、皆右隣の女を先頭にして並んでいく。こうなってくるともう、おかしいのは独りぽつんと立ってる私なのではないかと思えてくる。周りの方こそ、私に対する不可思議な気持ちで満ち満ちているのかも知れない。

 

 やっと電車がやってきた。大量の人が電車から流れ降りてくる。ここは階段近くのドアだ。最も混み合うスポットである。

 

 そんなのお構い無しと言わんばかりに、大量の人員の先頭に並ぶ右隣の女は、人の流れに逆らって一目散に車両に飛び込んだ。

 

 「ずるい!」私も女の後を追いたい衝動に駆られた。しかし、自分の頭の中に勝手に流れる「降りるお客様を先にお通し下さい」のアナウンスを無視出来ず、モヤモヤする気持ちを抑えながら最後まで待った。客が揉みくちゃになりながら降りてくるのを、時折ぶつかりそうになりながらも、じっと待った。

 

 やっと車両の中に滑り込み、空いている席を探して見渡してみたが、全て埋まってしまっていた。例の女は、呑気にスマートフォンを弄って一息ついている。

 

 順番なんて関係ないのか。ルールは破るものなのか。他人を気遣う精神を忘れているのか。

 

 席に座って一息つけるのが勝ちだとするなら、悔しいが右隣に並んでいた女の優勝である。彼女こそが、正義である。

 

 白旗を持たされた腕をだらしなく垂らし、私は別車両を目指してトボトボと歩みを進めた。

 

 あの女が正義なわけがあるか。あの女に天罰が下りますように。神様頼みますぞ。先にルールを破ったのはあの女です。私に白旗を上げる理由はございません。どうかあの女に天罰を。周りを惑わし、私をおかしな奴に仕立てあげたあのクソ女に。どうか、どうか。